Nishijima Orchard
長野県安曇野市のりんご農家
西 嶋 果 園
西嶋果園のりんご園は、長野県安曇野市の三郷という地域にあります。安曇野は日照量が多く寒暖差も大きいので、りんご栽培にとても適した土地です。
西嶋果園では約10品種のりんごを栽培しており、収穫は8月から11月にかけて続きます。まだ実をつけない若い木が多く、販売しているりんごは5品種くらいです。
栽培において重視していることは、りんごの木の生育サイクルに合わせた管理をすることです。必要な時期に、必要とする栄養を吸収できるように環境を整えることで、美味しいりんごが出来ると考えています。いかにして良いりんごを多く生らせられるか試行錯誤しながら作業を行っています。
2022年から「信州の環境にやさしい農産物認証」を取得しています。
地域の一般的な栽培方法と比較して化学肥料・化学合成農薬を50%以上(一部30%以上)削減して生産された農産物を認証する制度です。
園主が虫好きなため、りんご園でいろいろな虫が見られるようになれば良いなという思いから、殺虫剤の種類を変えたり使用を減らしたりすることを始めました。品質の良いりんごを採りながら虫をなるべく排除しない栽培を目指しています。
例えばアブラムシはリンゴの新梢に取りつき吸汁するので生育を阻害しますが、一方で多くの虫の餌になっています。テントウムシやクサカゲロウの幼虫やヒラタアブの幼虫はアブラムシを食べます。またアブラムシに寄生する蜂もいます。強い薬を使わず天敵を保護すれば、アブラムシの被害は気にならないくらいで収まります。それに何よりそれら虫たちの生き様を観察することができます。
同様な例としてナミハダニという葉緑素を吸って葉を弱らせるダニがいますが、ナミハダニにも天敵が存在します。カブリダニ類やヒメハナカメムシ、ケシハネカクシやハダニアザミウマ、ハダニクロヒメテントウなどです。一般的な防除では強い薬で天敵まで排除されるので殺ダニ剤を使う必要がありますが、天敵を保護すればやはり被害は出ても許容範囲で収まることがほとんどです。夏場の葉裏は小さな虫たちが大騒ぎしているので観察が楽しいです。
また例を挙げるとキンモンホソガという葉に寄生する蛾がいますが、葉に潜り込んで生活するため多くの薬では到達が難しく、一般的には浸透移行性のあるネオニコチノイド剤で防除されています。キンモンホソガにはキンモンホソガトビコバチやホソガサムライコマユバチといった寄生蜂が存在し、減農薬を始めたころキンモンホソガが急増して、その後を追うようにこれらの寄生蜂も頻繁に観察されるようになりました。キンモンホソガの成虫は名の通りキラキラしていて美しく、発見した時は少し嬉しくなります。
減農薬をしても大事に至らない虫がいる一方で、抑えるのが難しい虫もいます。
果肉の中に入るシンクイガ類や果実のくぼみに入るカイガラムシ類は天敵による防除が難しく、薬を効かせるタイミングが限られるため確実に防除するには残効性の高い強い薬が必要です。
カイガラムシ類は休眠期のオイル散布である程度抑えられていますが、現状ではスモモヒメシンクイの被害が深刻になりつつあります。
2023年は有機リン剤、合成ピレスロイド剤、ネオニコチノイド剤といった強い薬を使用せず、IGR(成長制御)剤、ジアミド剤、BT(微生物)剤といった選択性の高い弱い薬を使用しました。そうしたところ、スモモヒメシンクイ、クワコナカイガラムシ、リンゴワタムシの3種の被害が目立ちました。カイガラムシとワタムシはりんごの表面を汚すタイプの害なので、被害を受けても食べられますが、汚れ方がひどいので拭く手間を考えると困ります。シンクイは果肉を食べるので商品にはできず、被害が多いとすごく困ります。
2024年はこの3種を抑えることを目標に6月に有機リン剤を一度使用し、スモモヒメシンクイ用の薬を増やし、クワコナカイガラムシ用の薬も追加しました。しかし前年と比較してクワコナカイガラムシの被害は微増、スモモヒメシンクイの被害は園地によりばらつきますが、ところにより前年よりも増加しています。リンゴワタムシは果実に被害はないものの、木の幹に取りついて少しずつ範囲を広げているようです。来年は強い剤をもう1剤使用する必要があるのではないかと感じています。
以上のようなことを実践しながら、なるべく楽しみながらりんご栽培をおこなっています。
西嶋果園について


減農薬への取り組み


私たちがつくっています


園主 西嶋暁行
りんご栽培を志し2012年に安曇野市の農業生産法人へ就農。4年の研修を経て2016年に独立してりんご園経営を始めました。
妻・スタッフとともに、家族みんなで協力しながら畑作業と加工品製造を行っています。美味しいりんごを作るため日々勉強中です。